日本人の「読解力」が急落。8位→15位へ
2018年に経済協力開発機構(OECD)が実施した、国際的な学力調査(国際学習到達度調査:PISA)の結果が発表されました。
この調査は3年ごとに行われ、79か国・地域から義務教育終了段階の15歳、約60万人を対象に行われています。
日本では、無作為に抽出された高校1年生ら6100人が受験しました。
その結果、問題として注目を浴びているのが、「読解力」が前回(2015年)の8位から15位へと大きく順位を下げていること。
日本の子ども達の「読解力低下」が危ぶまれる結果となりました。
日本の子ども達は、本を読まなくなっている
専門家の間では、「長文読み書きの減少」が大きな要因と分析されています。
実際に、調査と同時に実施された生徒へのアンケートでは、小説や新聞でまとまった文章を読む機会と読解力には関係性が見られたそうです。
「読む」生徒は「読まない」生徒より、平均点が30点以上高い
読解力で成績トップだったのは、中国(北京・上海・江蘇・浙江)でした。
では、この2国で「本を読まない」生徒の割合を比較すると、
中国・・・3.3%
日本・・・25.7%
この差は歴然としています。
また、1か月に「数回以上、新聞を読む」割合は、日本は21.5%で、OECD平均(25.4%)を下回っていました。
そして、「読む」生徒は「読まない」生徒に比べて、平均点が30点以上高かったそうです。
読書量が減る
↓
長文に接する機会が減る
↓
語彙が減る
↓
自分の言葉で文章を書く力、文章から必要な情報を抜き出す力の低下
そんな傾向が垣間見られる結果となりました。
ネットの利用は「読む」より「反応」
長文を読まなくなった要因には、ネット利用時間の増加も背景にありそうです。
今回のアンケート調査で分かったのは、学校外で「毎日」「ほぼ毎日」、チャットをする生徒は87.4%。「1人用ゲーム」をする生徒は47.7%で、いずれもOECD平均を上回っています。
一方で、「パソコンを使って宿題」「勉強のためのネット検索」はOECD平均を大きく下回っていました。
この結果からは、スマホは使いこなしてもパソコンは使わないなど、デジタル機器を利用する機会は多くても、その内容や使い方に偏りがあることが考えられます。
LINEやツイッターなどのSNSは短いやり取りが中心で、文章を読み込んで返事を書くことより、早く反応することが重視される傾向があります。
また、スタンプを使えば、自分の感情を文章にするという手間のかかる作業をしなくても、相手とのコミュニケーションが進んでしまいます。
「読む」機会が減っているばかりでなく、身近なところで「書く」機会も減少していることが分かります。
教育現場でのデジタル機器活用が、日本は遅れている
日本の結果が振るわなかった要因のひとつに、コンピューター画面上で出題され、解答するというスタイルに、日本の子ども達が慣れていないことがあげられています。
今回、「読解力」の出題例が一部公開されており、わたしも試しにやってみました。
「ラパヌイ島(イースター島)」を訪れたある大学教授のブログを読んで問いに答えるというものでした。
出題内容が、従来の紙のテストに比べて難しいということはないように思います。
しかし、パソコン画面でじっくり文章を読んだりという経験がないと、確かに戸惑うかもしれないと思いました。
社会人になればパソコンは日常ですが、小中学生の子ども達にとっては、学校でも家庭でも、コンピューターを使って何かに取り組むという経験はまだまだ少ないのではないでしょうか。
中高生の8割は既にスマホを持っており、利用時間の長さが指摘されている一方、家庭も含めた教育現場でのデジタル機器の活用が圧倒的に遅れているという実情が見えた、今回の学力調査だったのではないでしょうか。
ゆっくり本を読む時間がない現代の子ども達
一連の報道のなかで、ある中学校の校長先生が「読解力の土台作りには、本に触れて語彙を増やし、視野を広げることが大切だ。今の子は部活動やスマホ、塾と忙しすぎるのではないか」と指摘していたのが印象に残りました。
確かにそうかもしれません。
いまの子ども達は忙しい。
忙しいから「本を読む」時間がない。
でも、暇でも、その時間はゲームやSNSに費やされ、「本を読む」ことが選択肢に出てこないかもしれない。
ネットがまだ世の中に普及していなかったわたしの子ども時代は、本や雑誌は娯楽のひとつでもあり、「暇だから本を読む」ということも、あったかもしれないけど。
いま、子ども達のまわりには、娯楽が山のようにあります。
暇な時に本を読む必要のない世の中になってしまいました。
「答えは分かるけど、問題が読めない」という落とし穴
さて、ここまで書いてきて、話をやっと小1に戻します。
実は「読解力」は長男と接していて気になっていました。
なぜなら、問題の「答え」は分かるのに、「問い」を正確に読んでいなくて間違えることがあったから。
たとえば、「数え方 (〇〇本、〇〇匹とか) 」を問われているのに、「数」を答えたり。
1年生、まだまだ読む経験が足りていないなと痛感。
保育園の頃から、この傾向は気になっていました。
こどもチャレンジをやっていましたが、ワークをやるときは「お母さん、問題読んで!」と頼まれて、読んでやっていました。
まだ、読むのに時間がかかって疲れるのでしょう。
問題文を読むのが面倒なんですね。
当時は「取り掛かるだけえらい!」と思って読んであげていましたが。
「読み聞かせ」も、もっとしてあげたらよかったなと反省。
よく、「入学前には何を身に付けたらいいですか?」という問いを見かけるけど、読解力の土台は早く付けてあげるに越したことはないと思いました。
もちろん、入学してからもどんどん伸びるけど、読書は一度離れてしまうと、なかなか読まなくなってしまいます。
幼少期の本とのふれあいなど、土台作りで差がでる世界なのかも?と思うのです。
タブレット学習にも落とし穴がある?
長男は小1でチャレンジタッチ(タブレット学習)を使っています。
いまの時代、早い段階からIT教材に慣れ親しむことも必要かな?と思ったのが、はじめたきっかけのひとつでもあります。
でも、現状では紙で出来ることをタブレットで行っているに過ぎません。
しかも、問題文を音読してくれるから、どうしても読む機会が奪われてしまいます。
タブレットをツールとして使ってはいるけれど、ではコンピュータを使いこなしているのか?と言われると、少し違いますよね。
もちろんタブレット学習のメリットもあり、だからこそ利用しているのですが。
タブレットを使って勉強することと、コンピューターを使いこなすことは、少し別の次元の話なんだということを、この度のPISAの結果で実感しました。
そもそも「どくかいりょく」ではなくて「どっかいりょく」
話はそれますが、わたしはずっと「読解力」は「どくかいりょく」だと思っていました。
しかし、パソコンで変換しようとすると、でてこない。
「どくかいりょく」と打ってみると、「毒か威力」「独海力」と出る…。
そこではじめて「どっかいりょく」であると知りました!
親も、学び直しです。
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